Q.漢字文化圏の外国人(児童・生徒)に日本語を教授する際の漢字・漢文扱いについて
 漢字文化圏の外国人、とりわけ中国語を母語とする児童・生徒に対しては、どのように常用漢字などを教授したらよろしいのでしょうか。


A.
 まず表記のことについて申し上げます。日本語は、漢字仮名交じり文です。仮名はひらがなとカタカナで、その他にローマ字、アラビア数字を使うことがあります。タテ書きと横書きとで多少表記のし方は異なりますが、原則は同じで、日本では新聞と『国語』の教科書、一般書の大部分がタテ書きです。
 漢字は「常用漢字表」に掲げられている漢字(字体は明朝体活字のうちの一種)一九四五字を使用します。「常用漢字表」は一九八一年に制定(内閣告示・訓令)されたものですが、「一般の社会生活で用いる場合の、効率的で共通性の高い漢字を収め、分かりやすく通じやすい文章を書き表すための漢字使用の目安」とし、「当用漢字表」(一九四六年)「当用漢字別表」(一九四八年)「当用漢字音訓表」(一九四八年)「当用漢字字体表」(一九四九年)「当用漢字改定音訓表」(一九七三年)「改定送り仮名のつけ方」(一九七三年)を改めて一つにしたものです。このうちの別表が、いわゆる学習用漢字として小学校一年から六年までに学習する漢字です。小学校で学習する漢字は、国語の教科書では、「教科用図書検定基準」に基づくいわゆる教科書体(康煕字典体を原則)で印刷されています。書く学習のためのものです。また学年配当がされていますが、それは「学習指導要領」「学年別漢字配当表」一〇〇六字に記載されています。転校したときに「習った」「習わない」が生じないようにの配慮です。現「学習指導要領」では、読み先行で、学習漢字は六年生までに読めるようにし、中学一年までに書けるようにすることとなっています。「常用漢字表」の漢字も高校までに読めるようにするとなりました。

 さて、現在日本で使われている漢字は次のようです。
  「常用漢字表」一九四五字
  「表外漢字字体表」一〇二二字
   人名漢字別表  法務省「戸籍法施行規則」によって設けられたもの。
 ワープロ、パソコンで使われる情報交換用漢字符号系
  JIS X0208-1981 六三四九字 第一水準―二九六五字 第二水準―三三八四字
                 現在は第四次改定で六三五五字
  JIS X0212-1900 補助漢字 五八〇一字 
  JIS X0212-2000 第三水準―一二四九字 第四水準―二四三六字
 (*JIS X0212-2000は、JIS X0208-1990の第三次改定作業中に明らかになった現代日本語を書き表すのに必要な漢字で、印刷業界の要求で集められた補助漢字と三〇〇〇字が重なる。)

 中国の簡体字は、識字用として作られたといってよいでしょう。中国ではこれを学習しなければなりません。台湾では繁体字、旧字体のままです。現在、世界で使われる漢字は八万とも九万ともいわれており、全部コード化されています。
 台湾ではいわゆる康煕字典体「繁体字」が使われています。日本では旧漢字はJIS X0208の第二水準に収められていますが、世界の文字はもっと違った整理が進んでいます。「ユニコード漢字情報字典」には、日本、中国、台湾、韓国の規格に含まれる五四、〇〇〇字の字形を相互交換がはかれる漢字二〇、九〇二字に絞り、文字コードで統一をはかりました。

 外国語として日本語を学ぶわけですから、日本語を正確に学ばなければならないということになります。基本的には以下の視点に立ってご指導ください。
◎ 外国語としての日本語は、日本語の規則にのっとって教えること。
◎ 母語としての中国語は、中国の音、文字を正確に教えること。
◎ 共通の漢字については、たとえば日本では「総」、中国では「悳」、台湾では「總」というように識別できるようにすること、日本語教育では日本語として正しく使えるようにすることが目標となります。日本語の旧体字は「常用漢字表」にはありませんが、JIS漢字にはありますから、また戸籍では戸籍のままに使用しますので、子どもたちの目には触れますから、字体の識別という指導をなさればよろしいのです。(なお、高校入試では旧体字を書いてもバツにはならないことを申しそえます。)