全国漢文教育学会 中国研修旅行報告
 
 蘭州・青海省の旅
              埼玉県立川口東高等学校 加藤和江
 
 平成十四年七月二十六日から八月二日にかけて全国漢文教育学会主催の中国研修旅行が行われた。団長は前愛国学園大学教授の田部井文雄先生、秘書長には千葉県立市川西高等学校教諭の江見雅志氏。団長以下十六名。今回の旅行は、北京、蘭州、西寧を経て、杜甫の詩(「兵車行」)にも歌われた青海湖に達しようというものであった。以下、日を追って旅の様子をご報告する。
 
●七月二十六日(金)晴れ
成田空港→北京新国際空港→盧溝橋→瑠璃廠→前門飯店梨園劇場→北京飯店東楼
 日本航空(JL781便)にて北京新国際空港に到着したのは午後一時過ぎ。空港を出てバスで盧溝橋に向かう。かつてマルコ・ポーロが東方見聞録に「世界で一番美しい橋」と記し、さらに、この橋の上から見る月は「盧溝暁月」と言われ、燕京八景の一つに数えられているというが、盧溝橋に着いたのは、午後三時ごろ。永定河に全く水がなく、川床一面に雑草が茂っている。真夏の日盛りとあって、その橋の美しさは想像するほかない。橋の欄干に彫られた五百体ほどの愛らしい石獅子がひときわ目を引いた。橋の袂には、清の乾隆帝の筆になる碑もある。我々以外の観光客の姿も殆んどなく、のどかだ。かつて盧溝橋事件が起こったというが、それに触れるものを目にすることはなかった。次は、瑠璃廠へ。「栄宝斎」などに立ち寄る。夕食をはさんで、前門飯店梨園劇場に向かう。本場の京劇を観るためだ。外国人観光客を意識してか、アクロバットの際立って多い劇を観ることとなった。
 「盧溝暁月」 撮影:加藤和江氏 禁転載  「橋の獅子像」 撮影:加藤和江氏 禁転載
●七月二十七日(土)晴れ
北京新国際空港→蘭州中川空港→甘粛省博物館→飛天大酒店
 九時十五分、北京のホテルを出発し、十一時二十五分発の中国西北航空(WH2112便)に乗り、蘭州へ。着陸が近くなるにつれ、機内の窓から、土色の幾襞にも囲まれた山々がうねうねと広がっているのが見える。田部井先生は「餃子の皮のようだ」とおっしゃったけれども、まさにそのとおりの風景。
 午後一時二十五分、蘭州空港着。空港内のレストランで昼食を摂った後、蘭州市内に入る。標高千五百メートル。現地ガイドの話によると、天気予報では、その日は最高気温28℃、最低気温16℃。週一回、砂嵐があるのだそうだ。甘粛省博物館に着いたのは、午後四時。五千年前の陶器や漢代の銅奔馬など、実に見ごたえのあるものが数多く陳列されていた。だが、見学時間が一時間しか残されておらず、足早の見学になってしまったのは残念であった。午後六時、ホテル着。現在、青海省西寧市の青海師範大学で日本語を教えておられる尾崎洋右・恭子ご夫妻と合流。ホテルを出て、市内のレストランで夕食。
 
●七月二十八日(日)晴れ
飛天大酒店→劉家峡ダム→炳霊寺→飛天大酒店
 午前八時蘭州のホテル出発。銀灘黄河大橋、河口大橋を抜けて河西回廊に入り、順調に目的地に向かうかと見えたバスが、九時十五分、交通渋滞に巻き込まれ、動かなくなる。灌漑用の水道管が老朽化して落下し、道を塞いでしまったとのこと。午後二時四十分、予定より三時間遅れで劉家峡ダムに到着。昼食を摂り、午後三時五十五分、高速船に乗って炳霊寺石窟に向かう。乗船場所では緑の澄んだ色をしていた水が、上流に行くにつれ、茶色に濁っていく。黄河は、上流ほど泥が沈殿されないままだからだそうだ。炳霊寺石窟に四十五分で到着。そそり立つ奇岩。一八四窟、六四窟、高さ二七メートルもある大摩崖仏を見学。午後五時半、高速船で戻る。午後七時、蘭州市に向けて、バス出発。午後十時、市内のレストランに到着。麺を指で糸のように裂いて仕上げてゆく「牛肉麺(牛肉でだしを取ったラーメン)」の実演を見ながら夕食。十一時半、ホテル着。
 「大摩崖仏」 撮影:加藤和江氏 禁転載
●七月二十九日(月)晴れのち夜雨
飛天大酒店→青海賓館→青海師範大学→青海賓館
 午前八時、蘭州のホテルを出発し、バスで約二百四十キロメートル離れた西寧市に向かう。西寧市は標高二二七五メートル。人口は百万人ほど。青海省の五分の一の人口が集中している。道の両脇に太い街路樹が立ち並び、甘粛省より青海省の方が緑が多い感じがする。尾崎氏の話では、西寧は何もない僻遠の地なので、野菜もどこかから運ばれた冷凍野菜を食しているという話を中国人から聞かされて赴任したとのこと。だが、「来てみると野菜も果物も何でもあった。」ということだった。
 十二時四十五分、西寧のホテル着。昼食を摂ってから、尾崎氏が勤務する青海師範大学へ。夏休みのこととて大学生の姿はまばら。国際教育交流中心、崔偉主任の歓迎を受ける。午後四時、ホテル着。一休みしてから、尾崎氏お勧めの“しゃぶしゃぶ”の店「小肥羊」で夕食。薬膳風味で美味。午後九時半、ホテル着。
 「西寧市街遠景」 撮影:加藤和江氏 禁転載
●七月三十日(火)曇り時々小雨、のち晴れ
青海賓館→塔爾寺→日月亭→青海湖畔→天湖賓館
 午前八時、ホテル出発。八時三十五分、塔爾寺着。塔爾寺(標高二五〇〇メートル)は、ラマ教六大寺院の一つに数えられているだけあって、境内がかなり広い。如来八塔、人経堂など伽藍の一つ一つを見るだけで二時間近くかかった。赤紫色の法衣を纏った僧侶の姿や少数民族と思われる姿の人々が往来し、バターでできている蝋燭が使用され、バター製の仏像まであった。
 昼食を摂り、十二時半出発、日月亭に向かう。広大な草原に羊やヤクが放牧され、白や黒のゴマが撒かれたように点在。午後三時五十分、日月亭到着。唐代、チベットに嫁した文成公主を祀った祠がある。バス出発。午後五時ごろ、一面に広がる満開の菜の花畑の向こうに紺碧の青海湖(標高三二○○メートル)が見えてくる。
 午後五時二十分、ようやく宿泊すべき草原賓館に到着。ところが湖畔で行われる白転車ロードレースの客で満室、部屋が予約されていないことがわかる。体調をくずされておられる方もおり、ともかく旅行社の人たちに湖畔で宿泊できる施設を探してもらうことにする。六時過ぎ、湖を見ながら夕食。地元少女たちによるチベット風の歌舞の接待を受ける。八時三十分、埠頭にて青海湖に沈む夕日を見る。かろうじて宿が確保され、八時四十分、十キロメートル離れた天湖賓館に向かう。午後九時着。
 
●七月三十一日(水)晴れ
天湖賓館→金銀灘草原→青海賓舘→北山寺→青海賓館
 自転車競技を避けて天湖賓館を出発したのが、午前七時。朝食を摂った後、小海、小北湖など、青海湖の周辺を巡りながらバスで西寧市に向かう。途中、日本では『草原情歌』という名で親しまれている歌が作曲された場所、金銀灘草原に立ち、観光用のテントを見学。今はモンゴル地方の砂漠化が進み、広大な草原はここ青海省に見ることができるだけだとか。西寧市内に入り、午後二時、ホテルに入って昼食。午後三時、二千年の歴史を持つという道教寺院、北山寺へ。ロープウェイ組と徒歩組に分かれて二時間ほど見学。頂上の寧寿山荘に「煮沸三江水同飲五岳茶(三江の水を煮沸して 同に飲まん五岳の茶)」という対聯が懸かっていた。青海省にその源を発している「三江」とは何か、話題となったが、現地ガイドの説明から黄河・長江・メコン川のことであることがわかった。夕食は、旅行社社長がチベット式のお詫びの宴を開き、ホテル着は十時近くとなった。
 
●八月一日(木)晴れ
青海賓館→西寧空港→北京新国際空港→北京飯店東楼
 西寧市を後にし、中国国際航空(CA1208便)で一路北京へ。北京に着いた後、昼食を摂り、三時半過ぎ、ホテル着。夕食まで自由行動。夕食は王府井全聚徳の北京ダック。
 
●八月二日(金)晴れ
北京飯店→故宮→北京新国際空港→成田空港
 帰国の日であるので、見学場所は故宮のみ。
 東華門から宮殿内を見学し、昼食を摂った後、午後二時五十分発日本航空(JL782便)で北京を発って、帰国。尾崎ご夫妻は、別便(MU507便)で帰国。
 以上が旅の概要である。
 最後に、熱のこもった講義で一団を導いてくださった田部井先生はじめ、西寧市・青海湖の資料を整え、事前調査をして一団を迎えてくださった尾崎氏ご夫妻、常に温かい配慮を忘れず快適な旅を作り上げていった団員諸氏、旅行社の方々に厚く御礼申し上げて擱筆とする。